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変形性膝関節症の原因Notchと予防剤DAPT

代表的な関節痛と言えば変形性膝関節症です。加齢や長年の酷使などにより、膝関節の軟骨が磨り減り、膝関節が変形してしまった状態ですね。こうなってくると痛みが激しくなり、ひどい場合には歩くのもやっと、という状況になってきます。

加えてこうした変形性膝関節症の患者は国内だけで2,400万人もいると推計されており、もはや国民的な疾患と言えるのかもしれません。

こうした患者の生活力や生活の質を著しく低下させる変形性膝関節症の抜本的な治療方法の確立が求められていますが、東大の最新のマウスを使った研究では、細胞の表面に存在する受容体タンパク質「Notch」が変形性膝関節に関与していること、ならびにNotchの阻害剤である低分子化合物「DAPT」を膝関節内に注射投与したところ、軟骨細胞に働いて変形性膝関節症を予防したと報告されています。

変形性膝関節症の原因となる要素についてはいくつか明らかになっていますが、その中の1つが「軟骨内骨化」です。

どの骨も軟骨から骨へと徐々に堅くなっていくのですが、軟骨についてはそれ以上堅くならないように作られています。しかし病的な要因で軟骨が分解され骨へと変質していってしまう症状が「軟骨内骨化」です。

当然、軟骨が柔らかくないと関節が柔軟に動かないわけで、こうした症状は関節痛と変形性関節症を引き起こしていきます。

そしてその「軟骨内骨化」を生み出す原因物質が受容体タンパク質であるNotchです。

このNotchの働きを止める低分子化合物が「DAPT」ですが、DAPTを膝関節内に注射すると、膝関節の中にある軟骨細胞まで浸透し、変形性膝関節症の進行を予防する働きがあることも同時に確認されました。

10週間毎日、DAPTを注射したマウスのグループ(右)と、そうでないグループ(左)とで比較すると、DAPTを注射していないグループでは明らかな関節軟骨(赤染色)の変性・破壊が見られたが、DAPTを注射したグループでは変性・破壊が抑制されていた、とのことですね。



原因物質もそれを抑制する成分が見つかったなら後は臨床だけ、と気がはやりますが、実際のところはDAPTを利用した治療方法が確立するのはまだまだ先のようです。というのも、軟骨を骨に変える作用は全ての骨が軟骨からできることから分かる通り、生命活動にとってなくてはならないものですね。

仮にDAPTを利用して、この作用をとめてしまうと、本来、骨ができないといけない部分に骨ができなくなってしまうという深刻な弊害が出てしまいます。

DAPTを利用した治療には、DAPTが作用してほしい場所と、作用してはいけない場所をきっちりコントロールできる治療方法の確立が必要です。それには相当の時間がかかるとのことですね。

とは言え、こうした医学の進歩により、いつか膝関節症が治癒する時代が来るものと思います。期待したいですね。

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